徒然読書日記200409
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2004/9/27
「アダムの呪い」 Bサイクス ソニーマガジンズ
母系にのみ受け継がれる「ミトコンドリアDNA」の追跡から、すべてのヨーロッパ人の元を辿っていくと、七人の女性に辿り着くという「イヴの七人の娘たち」 (
2001年徒然読書日記
2001/12/14 でご紹介)の驚愕から3年。今度は、男性のみに受け継がれる「Y遺伝子」が分析の俎上に乗せられた。で、なぜ「アダムの呪い」かというと・・・
「ミトコンドリアDNA」は卵子にあるから、月に1回、女性の一生を通じても、せいぜい500回程度のコピーなのに対し、「Y遺伝子」は精子にあるのだから、1日に7000万回!コピーされることになる。 これだけコピーを重ねれば、原本はもはやボロボロ、精子は疲弊し、このままでは、男がいなくなってしまうのだ。「Y遺伝子」に書き込まれた人類滅亡のシナリオである。
という最終的な悪乗り脱線はともかくとして、男系の遺伝は姓も受け継がれることが多いので(男子に恵まれず養子を取るか、母親が浮気をするかしない限り)、同じ姓の大元を辿っていくと、遺伝的に同系という確率が予想以上に高い。 そして、英雄と呼ばれた人の遺伝子を受け継ぐ子孫は、当然、圧倒的に多いのである。(例えばチンギスハーンの場合は1600万人)とか、子供を作らない「同性愛」にもかかわらず、同性愛の家系が存在するのはなぜかとか、 今回もまた、ぞくぞくするような「遺伝子世界の謎解き」満載の快著である。
2004/9/22
「百器徒然袋 風」 京極夏彦 講談社
東大卒で貴族階級出身、財閥の跡取りで、なおかつ、眉目秀麗、怪力無双、天下無敵、傲岸不遜の榎木津礼二郎は「生まれながらの探偵」を自称している。彼には相手の記憶が見えてしまうのだ。 つまり、犯人を見た瞬間に、事件は解決してしまう。ただし、音声は入っていない映像のみなので、事件の背景や、動機などはまったく判らない。そしてこの探偵の恐るべきところは、 捜査や推理などまったくしないというところにあるのである。そして案の定、今回はそれを逆手に取った罠が仕掛けられた。
というわけで、京極堂の裏シリーズ「薔薇十字探偵の事件簿」第二弾であるが、結局はいつものように京極堂が登場して、推理はこちらがやってくれることになる。(でないと、破茶滅茶に終わってしまうだけなのである。) それにしても京極堂ってこんなに下世話な喋りをしたっけか?と思わせるような、本シリーズとはまた違った味わいを楽しむことのできる裏シリーズに育ってきているなあ。
2004/9/15
「野中広務 差別と権力」 魚住昭 講談社
野中広務には二つの顔がある。「加藤の乱」でみせたように、傑出した情報収集力を駆使して政敵の弱点を握り、権謀術数と恫喝によってなぎ倒してしまう、「政界の黒幕」という恐ろしい顔と、 「ハンセン病訴訟控訴断念」で見せた、傷ついたものをこれ以上傷つけてはいけないという温かみと細やかな気配り、「弱者の痛みのわかる政治家」という優しい顔と。
この本は、そんな光と闇を抱えた個性的政治家の、地方から中央へと駆け上がってきた遅咲きの足跡をたどりながら、頂点に登り詰める寸前に躓いた出自の問題に迫る迫真のルポである。
「総務大臣に予定されておる麻生総務会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。・・・」 君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」
(引退を決め、最後の自民党総務会に臨んだ野中の発言から。)
2004/9/15
「人格障害の時代」 岡田尊司 平凡社新書
庭の梅ノ木に鶯が来たのを見つけた50代の息子が、足腰の弱った老母を背負って庭に降りる。「ほら、鶯ですよ、お母さん。」 それを目にした通行人の女性がつぶやく。「やあねえ、マザコンよ。」ガクッときた息子が一言。「昔は親孝行といったもんだ。」(随分昔に読んだ「サザエさん」より)
「疑り深い人やねぇ。」とよく言われるようなら、あなたは「妄想性人格障害」かもしれません。かといって「すぐに本気にするのね。」なんて言われるのも「依存性人格障害」を疑う必要がある。 「自信過剰なんじゃない?」とくれば「自己愛性人格障害」だし、「できれば消えてしまいたい」なんて思うのは「境界性人格障害」。傷つくことを恐れるあまり「葛藤状態から逃げ回る」ようなら 「回避性人格障害」だけれど、あ、そこそこ、「危険な状態をむしろ心地よく感じる」なんてのは、「反社会性人格障害」なんだからね。
ということで、昔は「わがまま」とか「頑固一徹」などと言いながら周囲が大目に見ていたような「性格」も、進歩した現代の医学の目で見ると、立派な「人格障害」だったということになるとするのなら、 問題は「個人」の方にだけあるのではなく、むしろ「我慢する」という道徳を失ってしまった「社会」の方にもあるのだろう。
2004/9/15
「終わりからの旅」 辻井喬 朝日新聞
年の離れた異母兄弟。兄は従軍中に密林を敗走する中で記憶に空白の数日間を持ち、弟は傷痍軍人の父を看病する恋人が、父の死後失踪するという過去をもつ。 お互いの存在を知らぬまま、それぞれの人生を駆け抜け、ふとお互いの原点ともいうべき戦争の傷跡を振り返るとき、それぞれの人生が交錯し、「人肉喰い」という重いテーマが表出してくる・・・
といった感じの粗筋だったような気がするのですが、なにぶん新聞連載でそれも1年半くらい続いたので、最初のほうをあんまりよく覚えていない。兄弟のそれぞれの人生のエピソードがごちゃごちゃになったりして・・・ 同じく朝日新聞連載の、蜚里「8月の果て」は、構想が膨らみすぎて、当初予定の連載期間では導入部ぐらいしか進まず、途中著者入院なんかもあったりして、途中で連載中止(その前に私は投げ出していましたが・・・)、 他誌で連載続行という衝撃の結果となりましたが、このたびめでたく単行本化の運びとなったようで。この「終わりからの旅」はその後を継いだ小説だったような気がしますが、そうすると、随分意味深な題名だこと。
2004/9/13
「逆システム学」 金子勝 児玉龍彦 岩波新書
科学の方法論には「要素」を出発点にする方法と「構造」を想定して全体から出発する方法の2種類がある。DNAにすべてを語らせる「遺伝子決定論」は前者であり、「構造主義」や「複雑系」の立場は後者となる。 しかし現実には、非常にたくさんの要素があり、それぞれが個性的な特長を持つため、それを羅列的に並べる「要素還元主義」では、情報の膨大さに振り回され、暴走してしまうだけである。だからといって、ある種の単純化された前提の下に、 一つのシステムを想定する「複雑系」の安直な方法では、現実は「複雑」すぎて計算不可能である。なぜなら、システム(というより仕組み)は確かに存在し、要素は有限個であるが、要素同士が多重フィードバックでつながっているためである。 演繹的にシステムを定義するのではなく、個々の要素を調整制御する多重フィードバックの存在を帰納的に実証することによって全体像を明らかにするのが「逆システム学」という方法である。
というわけで「逆システム学」で分析してみたら、「生物進化における多様性と適応」が「市場経済におけるセーフティネットの役割」と相呼応するテーマだったとか、「グローバル・スタンダード」というアメリカ・モデルの「強制」は ドーキンスの「利己的な遺伝子」に匹敵する(そこまでは言っていないか)とか、とにかく刺激的な議論に満ち溢れた好著である。ちなみに金子勝はもちろん経済学者だが、児玉龍彦は「考える血管」を著した医学者である。
2004/9/9
「邂逅の森」 熊谷達也 文芸春秋
本年度直木賞受賞作。(もう1人は奥田英朗「空中ブランコ」で、こちらは受賞前にご紹介しましたね。)というよりも、山本周五郎賞とのダブル受賞とご紹介すべきでしょう。 何か面白い本をという時には、芥川賞は問題外、直木賞はまあまあ。山本周五郎賞は絶対にはずれなしというのが定評になっておりますが、まさに定評どおりの超力作でありました。 お話は狩猟を生業とする「マタギ」の世界。人里はなれた山中の一面の銀世界の中で、熊を追うという、時代錯誤も甚だしいテーマの中で、これほどまでに熱い人間のドラマが展開されようとは・・・ 話の途中で、わけあって「銅山の鉱夫」になるのですが、「マタギ」にしろ「鉱夫」にしろ、我々とはまったく異世界の習俗が、見事なまでに鮮やかに活写されているため、 違和感なく物語に溶け込んでしまえる、秋の夜長にお奨めの一冊です。
2004/9/3
「現代日本の問題集」 日垣隆 講談社現代新書
たとえば、イラク人質事件について
予想どおりと言うべきか、官房長官に対する記者会見で「首相の責任」を糾した記者がいました。もし政府・外務省に責任があると言うのなら、 その前提として「個人の意思を無視した強制的退避命令」を出せるようにすべきだと実質的に求めていることにならざるをえません。・・・ 少しは質問の意味を考えてから言葉を発してもらいたいと思います。
あるいは、あのアザラシ騒ぎについて
「タマちゃん」と口にする大人は、一体全体恥ずかしくないのでしょうか。・・・いかにも莫迦らしいことに、すでに(住民)登録処理がなされてしまいましたが、 このアザラシ君には四年半後に入学通知書が届くことになります。
以前に本欄でご紹介した名著「そして殺人者は野に放たれる」と同様に、まさしく筋の通った、胸のすくような正論である。 しかしこの本は、現代日本で巻き起こっている様々な「理不尽」を嘆き、怒りをぶつけるスタイルを取っているため、とても親しみやすいがゆえに、物足りない。 そう、これは、一杯飲みながら、テレビのニュースに、いちいち文句を付けて溜飲を下げる、我々「おじさん」族にとって、極めてなじみやすいスタイルなのだ。 何となく「綾小路きみまろ」を彷彿とさせる語り口のような気も・・・(読んだ事ないけど)
2004/9/2
「セックスボランティア」 河合香織 新潮社
帯に「障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある。」とあるこの本は、障害者の「性の介助」の実態を、インタビューによって取材したものである。 その取材先は「自慰行為に対する性の介助の募集者と応募者」「障害者専門風俗店のオーナーと客」「障害者同士の夫婦」「健常者と障害者の夫婦」など多岐にわたり、 セックスボランティア先進国オランダ(市からセックスに対する助成金が出る)での取材もある。で、とても表現が難しいですが、読後の感想。それは確かにいろいろ不便なことはあるだろうけれど、 じゃあ健常者なら不便はないのか?というと決してそんなことはないわけで、「障害者の性は、見てはいけない、触れてはいけないこととされてきた。」というなら、健常者の性は、見ても、触れてもいいのか? と思ってしまうわけです。つまり、障害のあるなしは、確かに体力的或いは技術的な難易度という問題を含んでいるとは思いますが(あと子供ができた時の養育の問題も確かに深刻ではあるけれど) 究極のところでは、障害の有無よりは、性に対する姿勢という心の問題のほうが大きく、それは健常者でも同じではないのかと思うわけです。 少なくとも私は、初対面の人に対して、「厚かましいのですが、口でしていただけないでしょうか?」とは、とても言い出せません。
「障害者の性についてどのように思うか?」と聞いたときに、ソープ嬢はこう答えたという。 「何を思えっていうのよ。チンチンは立派に立つ。オツユもドバーッと出る。チンチンが普通ならみんな同じ友達よね。」
2004/9/1
「いよいよインフレがやってくる!」 浅井隆 第二海援隊
これまで何度かご紹介した、日本国破産本(たしか2003年に破産するはずだったのですが)の流れの最新版です。書いてあることはいつも大体同じで、 「海外ファンド」に資金を移動して、資産を守りましょうということなんですが、それは「資産家」の方々にお任せするとして、具体的な数字が衝撃的なので、ここでご紹介しておきます。
税収が42兆円しかないのに、80兆円超の予算を組むという気違い沙汰。(景気が回復したといっても、税収の増は1兆円にも満たないのです。)
公約で有名になった「30兆円枠」実際には36兆円の国債が発行されているが、それは新規国債のお話。償還期限を迎えた国債(国の借金です)は返済しなければならないが、 国にはお金がないので、「借換債」という国債を発行する。これが84兆円!(これって、サラ金頼みの自転車操業とどこが違うのでしょうか?)
というわけで、国の借金の残高は、毎年60〜70兆円ずつ増えている。金額が大きすぎて、ピンと来ませんか?1秒間に200万円ずつ増えているのです。 これであなたも、本気で「日本国脱出」を考え出したのではありませんか?
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