Prima schola alba est.
プリマ・スコラ・アルバ・エスト
まず、この文の解釈をする前に、使われている単語 Prima / schola / alba / est を順に見ていきましょう。これに似ている英単語を想像
できませんか?
といったような感じで、簡単な<名句>を題材にラテン語の文法や語彙を教えてくれるなんて期待していたら、アナタは暇人同様に裏切られる
ことになるだろう。なぜなら、東アジア初のバチカン裁判所弁護士という肩書を誇る著者の、韓国の大学における超人気講座「初級・中級ラテン
語」の冒頭を飾るこの名句の意味は、直訳すれば「最初の授業は白い」、すなわち「最初の授業は休講だ」という、ローマ時代から教師が授業
初日に学生に話していた言葉であるからだ。
動詞ひとつの変化が160以上あり、名詞も単数・複数がそれぞれ1〜5格まで5つに変化し、それを飾る形容詞は名詞の性・数・格に一致
させねばならず・・・<ラテン語は文法が非常に複雑な言語です。>
しかし、だからこそラテン語を学ぶことは、平凡な頭脳を勉強に適した頭脳へと活性化させ、思考体系を広げてくれることにつながる。ラテン
語を体得していく過程で、暗記力や勉強に対する自分なりのアプローチがおのずと備わっていくこと、これこそがラテン語学習の醍醐味だという
のである。つまり、このクラスの最終目標はラテン語を使いこなせるようになることではなくて、学生たちにラテン語への興味を植えつけること
なのであり、<ラテン語を通じて思考体系の新たな枠組みを構築してもらいたい>というものだったのだ。 Non scholae, sed vitae discimus.
私たちは学校のためではなく、人生のために学ぶ。
セネカの有名なこの文句の発音は、次のようになる。
ローマ式:ノン・スコレ・セドゥ・ヴィッテ・ディシィムス
古典式:ノーン・スコラエ・セド・ウィータエ・ディスキムス
ローマから中世、近代へとヨーロッパ文化を継承してきたラテン系(仏、伊、西など)の国々が、その流れを汲むという自負心からローマ式を
採用しているのに対し、ローマに征服されていない国々(英・米・独など)は、野蛮族呼ばわりから一転、主導権を奪い返したことの差別化を
図り、原文明の古典式を固守している。ネイティブが存在しないラテン語には、発音ひとつとってみても、それぞれの国が歴史をどのように
眺めているかなど、たくさんの問題が複合的に反映されているのだ。
「言語は勉強ではない」のはそれが自分を表現するための手段であり、世界を理解するための枠組みであるからだ。「言語を何のために学ぶか」
のほうがずっと大切だ。 もし、あなたが何かに関心を持って学んでみようと思うのなら、なぜそれに興味を持つようになったのか、なぜ学びたくなったのかを、少し
振り返ってみてください。・・・ラテン語の授業に取り組む前に、みなさんのその気持ちが、単なる子どもじみた幼稚さではなく「偉大なる
幼稚さ」であるという事実を、ぜひ忘れないでください。