徒然読書日記201911
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2019/11/30
「日本近現代史講義」―成功と失敗の歴史に学ぶ― 山内昌之 細谷雄一 編著 中公新書
「統治者にとって歴史は、無限の宝庫として眠っている」。ところが、「政治家は、この宝庫を開けて十分に使い切ることができ ない」。他方で、「職業として歴史を教え書いているわれわれは、概して彼らを助けるのに力を貸してこなかった」(ハーヴァード大学歴史 学部教授アーネスト・メイ『歴史の教訓』)
<政治家は孤独である。困難な決断を行わなければならないときに、いったい何を頼ったらよいのか>(細谷雄一)という問題意識の下、 自民党立党60周年記念として「歴史を学び未来を考える本部」で3年弱にわたって催された、これは14回に及ぶ講義の記録である。
植民地化の脅威をはねのけた「独立革命」としてではなく、憲法成立までの20年以上に及ぶ長い革命のプロセスとして、明治維新を捉える べきだろう、という、「立憲革命として明治維新」(瀧井一博)
日露戦争で「満州」が戦場になったのは、日本の立場として朝鮮半島を譲れなかったからだとすれば、日清戦争はいまなお終わっていないと 言えよう、という、「日清戦争と東アジア」(岡本隆司)
から始まって、2度の世界大戦、東京裁判、歴史認識問題、戦後日中問題まで、150年に亘って蓄積された日本の近現代史の基本を押さえた レクチャーは、
「司馬史観」的なものに留まるのではなく、起点としての「明治」以前の江戸期の経験を組み込んで、未来に向けた歴史観を構築することが 課題である、という、「ポスト平成に向けた歴史観の問題」(中西寛)
で締め括られることになるのだが、どの時代のどのテーマを取ってみても、「東進予備校」を凌駕する超一流の講師が配されているのは、 さすがに与党体制である。
いずれにしても、日本の近代を静かに準備した家康の「日本1.0」が、外圧のせいで明治維新による近代化と産業化の「日本2.0」に 取って代わられ、さらに1945年の敗戦以降の「日本3.0」による経済成長国家に変貌するなど、その時に最適のシステムを選びながら 国を維持発展させてきたのだとすれば、第一次世界大戦の終結から100年にあたる2018年は、「日本2.0」の破綻と「日本3.0」の 出発を考える上でも最適の年であった、という、「序章 令和から見た日本近現代史」(山内昌之)
の論考は傾聴に値するものであった。70年や100年という「時間の区分」は、見る立場が違えば、視覚の違いで評価の論点は違ってくる。 過去にこだわり続けるのか、未来を見つめることで歴史を止揚するのか、それが「歴史認識問題」の難しさなのであれば、東アジアにおける 歴史認識のあり方としては、その理想的実現は難しいにしても、少なくとも日本人に可能であり、原理的に確認すべき点はさほど難しくない。 まず何よりも、互いに長所と短所があれば、長所を評価して短所に寛容になる努力をすることだ、というのだった。(それができれば、苦労は しないのだが・・・)
本書でわれわれは、明治以来の日本の近現代史を学んできた。その歴史は直線的でも、単純でもなく、複合的な力学が働き、多くの可能性が あるなかで、日本の政治家が選択してきた道であった。まずは虚心坦懐にそのような過去の軌跡を学び、政治家がどのような選択を行ってきた のかを知ることが肝要だ。そこにも多くの迷いや悩み、困難が感じられるであろう。(細谷雄一)
2019/11/14
「地獄めぐり」 加須屋誠 講談社現代新書
口では「地獄なんて嫌だ」という人は数多い。しかし、実は地獄に興味を持つ人は決して少なくない。老いも若きも男も女も、なぜか 地獄に心惹かれる。
<それは一体なぜなのか?>そんな疑問に答えんがため、不気味な「地獄絵」を題材に「地獄の歩き方」を指南してくれる、これは日本仏教 美術史専門家による地獄の案内書なのである。
殺生の罪を犯した者が堕ちる「等活地獄」。
それに加えて偸盗の罪を犯せば「黒縄地獄」。
これに邪淫の罪が加わると「衆合地獄」。
さらに飲酒の罪を犯すと「叫喚地獄」。
妄語すなわち虚言の罪が加われば「大叫喚地獄」。
邪見すなわち不正な心の罪が追加されると「焦熱地獄」。
清浄な尼を犯した者は「大焦熱地獄」。
そして父母を殺すなど五逆罪となれば「阿鼻地獄」。
と、なんと地下8階建だという地獄のどの階に堕ちるかは亡者の罪の種類や軽重に応じて定められていて、獄卒に切り刻まれたり(等活)、 大釜の上で鉄の縄を渡らされたり(黒縄)、鋭利な葉の繁った刀葉樹を登らされたり(衆合)、口に溶銅を流し込まれたり(叫喚)、さらには 舌を抜かれたり(大叫喚)、猛火に焼かれたり(焦熱)、大風に吹き飛ばされたり(大焦熱)、ついには頭下足上でただただ落ちていく(阿鼻) のだが、そんな責め苦を受けて殺された後に、涼しい風が吹いてくると生き返り、もう一度はじめから無限に繰り返されることこそが、 「地獄の苦しみ」なのである。
さて、他人の子どもを誘拐し、無理矢理に性行為をして泣かせた者は、「衆合地獄」の別処の一つである「悪見処」に堕ちる。そこでは、 地獄に似つかわしくない白肌の子どもが獄卒たちに鉄の槍で股間を突き立てられる様子を、ただ見せつけられるのだが、それは我が子なのだ。 もちろん、これは因果応報の定めを視覚的に伝える目的で描かれた「地獄絵」なのだから、凌辱される子供を見つめるのは、罪を犯した男だけ ではない。画中には凶暴な獄卒たちもおり、これを描いた絵師や絵を前にした注文主は、亡者と獄卒のどちらに対しても、感情移入することが 可能だったはずだ、と著者は説く。
<かつて本図を目の当たりにした人たちは、果たして一体どちらの視線におのれのまなざしを重ね合わせたことだろう。>
人々が地獄を忌避しつつも、それに「まなざし」を向けることを厭わず、むしろ積極的に地獄絵を享受してきたことには理由がある。心のなか に暴力とエロスの欲動を秘めた私たちは、皆平等に生まれながらにして、「地獄に堕ちる資格」を与えられている、というのである。
それは、地獄はどこか遠くにある、縁もゆかりもない異界だからではなく、自分自身の心のうちに地獄の本質があらかじめ組み込まれている からにほかならない。・・・不気味なものとは実は馴染みのものであり、それは精神的には避けがたく、否応なく万人の心に繰り返し想起 されるイメージとなるのだ。
2019/11/12
「奴隷船の世界史」 布留川正博 岩波新書
奴隷船に囚われの身となった黒人たちは、毎日16時間あるいはそれ以上、身動きひとつできず板のうえに寝かされて、通常2カ月 以上も大西洋上を航海するのである。
1日2回の食事と水が与えられる奴隷たちが、1日に1回は甲板上で音楽に合わせてダンスを踊らされたのは、彼らを生きながらえさせるため だったし、航海中何度か海水や酢、タバコの煙などによって洗浄されたのも、赤痢や天然痘などの伝染病が流行しないようにするためだった。 それはあくまで、「商品」である奴隷のロスをできるかぎり少なくするという、「経済効率」に叶った措置だったのである。
<奴隷船のことを「移動する監獄」あるいは「浮かぶ牢獄」と言ったが、まさに言い得て妙である。>
15世紀半ばにポルトガル商人が先駆者となった「大西洋奴隷貿易」は、やがて南北アメリカの植民地開発のための必須要素となったことで、 ポルトガルに続いてオランダが参画し、17世紀になるとイギリスやフランスも独占会社を設立して、18世紀には「奴隷貿易」は最盛期を 迎えることになる。それを担ったのが、大西洋を往き来した奴隷貿易のための専用船、「奴隷船」だった。
<そんな奴隷船に焦点を当てることによって、大西洋奴隷貿易や奴隷制、あるいはそれらの廃止運動について、生々しい人間の動きを描ける のではないか?>
本来は「奴隷貿易史」を専門とする著者が、「奴隷船」をテーマとした新書を書いてみませんかという編集部からの依頼を引き受けることに したのは、近年、国境を越えた歴史家たちの協力によって、奴隷貿易に従事した船舶のデータベースが充実し、公開されるようになったからだ。 約400年間に3万5千件以上という膨大な数に及ぶこのデータベースを活用することで、
・できるだけ速く航行でき、多くの奴隷を詰め込むことができ、しかも損失を少なくできる条件を兼ね備えた奴隷船の構造はどのようなもの であったのか。
・奴隷船上で独裁的な権限を振るった船長は、どのように水夫たちを使役し、時に不穏な雲行きとなる奴隷たちとどのように対峙したのか。
・地元では裕福な名望家でありながら奴隷船に投資し奴隷貿易全体を統括した奴隷商人や、奴隷購入の手形を引き受けたエージェントとは どのような人々だったのか。
などなど、「奴隷船を動かした者たち」の実像とその行動をあぶりだした後、話はいよいよ奴隷制の廃止の顛末に向けて舵を切ることになる。
欧米各国での奴隷制廃止運動が進む中、19世紀最大の奴隷輸入地域であったブラジルとキューバで奴隷貿易が廃止されたのは1866年の ことだった。しかし、奴隷制が廃止されたとしてもプランテーションは続いていくので、英領西インドやブラジルでは奴隷に代わる労働力と して大量の移民が導入された。<もっとも弱い立場の女性や子どもに集中>するようになり、現代でも偏在している別の新たな「奴隷制」の 実態に、私たちは監視の目を向けねばなるまい。
チョコレートの甘さは奴隷制度の苦い経験を隠すことができるわけではありません。チョコの原料のカカオは幼い子供たちがつくっています が、その子たちはだまされて売られてコートジボアールのカカオ・プランテーションでこき使われているのです。(『世界商品と子供の奴隷』 下山晃)
2019/11/11
「三体」 劉慈欣 早川書房
「わたしの仮説はたいへんシンプルです。太陽の運行になんの法則もないように見えるのは、この世界に三つの太陽があるからです。 たがいに摂動を起こさせる引力の影響のもとで、それらの運行は予測不能になります――いわゆる三体問題です。」
惑星がそのうちの一つの太陽をめぐって安定的に運行している「恒紀」と、三つの太陽の引力圏内を不安定に彷徨うことになる「乱紀」。 そんな二つの「紀」を交互に不規則に繰り返す中で、発展したかと思えば頻繁に滅亡し、また発展するという予測不可能な進化を遂げてきた 三体人の世界。地球から450光年のかなたに存在するらしい「三体文明」は、それでも地球の文明をはるかに凌駕する域に達していた。
文化大革命で父を惨殺されたことから、地球人の文明を刷新する宗教的使命感を抱えるようになった、天体物理学者の葉文潔は地球外文明への 交信を試みるが、たまたまそのメッセージを受信した「三体人」が、この呼びかけに答えることにしたのは、太陽系という安定した世界に魅力 を覚えたからだった。
やがて、世界的な科学者を次々に自殺に追い込むという怪現象(ゴーストカウントダウン)が頻発するようになるのだが、それこそは、三体人 が送り出した「地球侵略のための大艦隊」が地球に到達する450年後まで、地球の科学技術の進歩を止めるための謀略だったのだ。
作戦司令センターの全員は、汪Eがカウントダウンを見たときと同じように、彼らのメッセージをその目ではっきり見た。メッセージは 二秒間あらわれ、そして消えたが、全員がメッセージを理解した。それは、たったの十文字だった。
「おまえたちは虫けらだ」
というのが大掴みのストーリーなのだが、(もちろん、実際の物語は時空を超えて右往左往するので、こんなに単純ではない。)たまたま、 『数字のミステリー』で「三体問題」の摩訶不思議を読んだばかりだったので、それをSFの世界に展開するとこうなるか、と思った次第。
それはそれとして、メッセージを受け取って打ちのめされ、自棄酒に酔うばかりの科学者たちを、引きづるように連れ出した、作戦司令センター のはみ出し者の警察官・史強が向かった先は見渡す限りの麦畑で、びっしりと畑を覆いつくしていたのは、イナゴの群れだった。
「地球人と三体人のあいだの技術力の差と、イナゴと地球人のあいだの技術力の差。両者をくらべてみて、どっちが大きい?」
ふたりの酔っぱらい科学者にとって、これは頭から冷水を浴びせられたような質問だった。・・・え?終わり?なんとこの本は、本国の中国語 版が合計2100万部の売上を記録し、アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長編部門に輝いたという、<三体>三部作の第一部に すぎなかったのである。
「おれたち地球人は、この虫けらをなんとか滅ぼそうと、全力を傾けてきた。・・・地球人を虫けら扱いする三体人は、どうやら、ひとつの 事実を忘れちまっているらしい。すなわち、虫けらはいままで一度も敗北したことがないって事実をな」
2019/11/4
「自衛隊防災BOOK」―危機管理のプロ直伝のテクニック100― マガジンハウス編 自衛隊/防衛省協力
問 地震発生!まず最初にすることとは?
答 真っ先に確認するのは「上」と「出口」
NG行動 <下を向いて姿勢を低くする>
落下物から身を守ろうという恐怖心から、つい体を低くかがめ、下を向いてしまいがちだが、これでは上から落下物があったときに回避 できない。
正しくは <落下物がないか頭上の危険を確認>
身を守るために上を確認しながら、安全な場所へ移動する。バッグなどで頭を守れば◎。モノが倒れてくる可能性もあるので、サイドにも 細心の注意を払おう。
といった災害時のトラブルへの対処はもちろん、食料の確保や給水、緊急措置、人命救助まで、ピンチに役立つノウハウを満載したこの本は、 「大災害が発生した!」、そんなときに私たちを助けてくれる、心強い危機管理のプロフェッショナルである自衛隊が、いざというときに、 私たちでも簡単に取り入れることのできる、さまざまなテクニックやアイデア、100のライフハックを本邦初公開してくれたものなのである。 (自衛隊の公式動画サイト「ライフハックチャンネル」でもテクニックの一部が公開されているという。)たとえば・・・
<骨折のとき添え木を作る方法>
指にはペンを輪ゴムで、腕の場合は段ボールをネクタイで、足の添え木には傘をベルトで締めるのがベスト。
<食器洗いの手間をなくす方法>
食器に小さめのサイズのポリ袋をかぶせて料理をよそい、食べ終わったらそのままポイ!ラップでもOKです。
<使い捨てカイロを二次利用する方法>
ブーツや冷蔵庫の中に入れれば、防臭剤として活躍する。中身は湿気などを吸着する活性炭なのだ。
<崩れにくい段ボールの積み方>
縦向きと横向きを交互に積んでいくだけでズレにくくなり、その結果、崩れにくくなるという。
<ハサミの切れ味を良くする方法>
半分に折ったアルミホイルに10箇所切込みを入れると、融点が低いアルミが溶けて小さな傷を保護してくれる。
などなど、これはまさしく一家に一冊「備えあれば憂いなし」の常備薬のような本なのである。
そもそも、ライフハックとは効率よく仕事を行い、生産性を上げ、人生の質を高めるための工夫や知恵のことです。自衛隊はそんなライフ ハックをたくさん持っています。地震をはじめ、水害や雪害、火山の噴火などの自然災害や火災、山岳救助などの災害派遣に携わってきた経験 から生まれたライフハックは命を繋げるものはもちろん、毎日の生活がちょっぴり快適に楽しくなるなど、バリエーション豊かな100項目を 本書で紹介させてもらいました。
2019/11/1
「ケーキの切れない非行少年たち」 宮口幸治 新潮新書
丸い円を描いて、「ここに丸いケーキがあります。3人で食べるとしたらどうやって切りますか?皆が平等になるように切って ください」という問題を出してみました。すると、その粗暴な少年はまずケーキを半分に切って、その後「う〜ん」と悩みながら固まって しまったのです。
<どうしてベンツのマークのように簡単に3等分できないのか>
このような切り方は小学校低学年の子供たちや知的障害をもった子どもの中には時々見られるものなので、描かれた図自体は問題ではない。 問題なのは、これを描いたのが強盗、強姦、殺人事件など凶悪犯罪を起こしている中学生・高校生の年齢の非行少年たちだ、ということ なのである。
・簡単な足し算や引き算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章すら復唱できない
見る力、聞く力、見えないものを想像する力がとても弱く、そのせいで友だちから馬鹿にされるほど「勉強が苦手だった」というだけでなく、 話を聞き間違えたり、周りの状況が読めなくて対人関係で失敗し、「不真面目でやる気のない子」としてイジメや虐待を受けてきた。
<それが非行の原因にもなっているのではないか?>
というのが、公立精神科病院の児童精神科医から医療少年院の矯正施設へと転身し、多くの問題を抱えた「非行少年」たちと接する中で 気付かされたことだった。
<想像力が弱ければ努力できない>
“将来○○になりたい”といった具体的な目標を立てることが難しくて努力しなくなるため、成功体験や達成感が得られないだけでなく、 他人の努力も理解できない。
<認知機能が弱ければ反省できない>
“何故そんなことをしたのか”と尋ねても、難しすぎてその理由を答えられない。自分自身や被害者の思いに向き合うことができず、「反省 以前の問題」なのだ。
こういった少年たちの中に、幼い時から病院を受診していたという子がほとんどいないのは、彼らの保護者・養育環境がお世辞にもいいとは 言えないからだ。発達上の問題(絵を写すのが苦手、勉強が苦手、対人関係が苦手など)に気付いて病院に連れてこられるような児童は、 保護者のモチベーションが高いのである。
<ではどうすれば? 1日5分で日本を変える>
というわけで、最終章はワーキングメモリを含む認知機能向上への支援として有効な「コグトレ(認知機能強化トレーニング)」のご紹介と あいなるのだが、運転免許更新時の「認知機能検査」に冗談抜きに不安を覚えるようになった今日この頃、暇人もそろそろトレーニングを 開始しようかと思った次第なのである。
コグトレは、認知機能を構成する5つの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断)に対応する、「覚える」「数える」「写す」 「見つける」「想像する」の5つのトレーニングからなっています。
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