徒然読書日記200712
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2007/12/26
「ラビリンス」 Kモス ソフトバンククリエイティブ
ピレネー山脈にほど近い山で遺跡の発掘調査に参加して、洞穴を見つける。 洞穴の中には、二体の骸骨と壁に刻まれた迷路、石の指輪があった。
という、2005年の現代を生きる女性アリスを主人公とする物語が、
フランス南部カルカソンヌに住むアレースは、父が太古の昔からの秘密の守護者であることを知る。
という、「3つの書」にまつわる秘密を明かされた、800年前の女性を主人公とする出来事とつながって、 フランス南部にあるカタリ派の聖地「カルカソンヌ」を舞台に展開されていくというこの本は、
「全英100万部突破、39カ国で出版決定。全世界で話題騒然の驚異のベストセラー!」
であるということこそが「最大の謎」ともいうべき、ミステリーだった。
「十字軍」による「異端征伐」に名を借りた「殺戮」の歴史や
「輪廻転生」を宗旨とする「異端カタリ派」にまつわる「聖杯伝説」の謎
など、取り扱っている材料だけを見れば「面白くない」はずはないのだが、 残念ながら、引用したくなるような「本文」が見当たらなかった、という事実一つをとってみても、 「小説」としてのレベルは、かなり低いのではないかと思われる。
史実と物語の絶妙なバランス。ミステリー・ファンも歴史小説ファンも読んでほしい。
と、養老孟司が推薦していたので読んでみたわけなのだが、ついに「バカの壁」を乗り越えることはできなかったようである。
2007/12/23
「独身手当」 若林亜紀 東洋経済新報社
神奈川県の川崎市役所では、勤続15年以上でずっと独身だった職員が満40歳になると現金7万円がもらえる。 正式名称は「結婚祝い等調整給付金」。結婚すれば祝い金がもらえるので、独身職員と既婚職員の公平を図るためだそうだ。
なんていうのは、まだ可愛いほうなのである。
課長を5年やっても部長になれない者は「困難課長」と呼んで部長に準じる給与を払っていたという
『出世困難手当』(川崎市)
「年間40日以上の無断欠勤がない」などという、民間なら一発解雇となりうるような規定さえ守っていれば、 毎年1万円前後自動的に昇給するというのは、
『勤務成績良好手当』(国家公務員)
「北海道と同程度」の気象条件の市町村で働く公務員に、暖房費として支給されるはずが、 兵庫、和歌山といった関西圏でも支払われているというのは、
『寒冷地手当』(西は広島、島根まで)
これでも足りず、年度末3月ともなれば、「日本の風物詩」とも言うべき「不要不急の道路工事」が全国津々浦々で繰り広げられることになる。 外務省では高級ワインを1000万円分まとめ買いし、厚生労働省では「どこでも好きなところへ」出張扱いで旅行できるという、
『予算消化手当』である。
「お母さんとでも行ってきなさい」と部長に言われて、本当に母親と観光旅行に出かけたことがあるという著者は、 かつて厚労省系の特殊法人に勤めていた。 4000万円の「システム改善費」の見積に対し、3万8千円の「市販ソフト」で事足りることを進言し、上司から叱責を受けるなど、 「不当な扱い」を受けたことに対する、これは、痛烈な「しっぺ返し」とも言うべき「内幕暴露本」なのであるが、
この本がどれだけ売れたところで、「公務員はいいなあ」という世間の風潮は微動だにしないような気がするというのが、悲しい現実なのだった。
赤字国債の発行がゼロになるまで、議員と公務員のボーナスはゼロにしたらどうだろうか。国債で払ってもよい。 おそらく、議員も公務員もがぜんムダ遣いを止め、経費削減に必死になることであろう。民間企業なら、たとえ大手でも会社が赤字なら、 ボーナスがなかったり、自社製品購入券が配られることがある。
2007/12/18
「裁判官の爆笑お言葉集」 長嶺超輝 幻冬舎文庫
しっかり起きてなさい。
また机のところで頭打つぞ。
というのは、証人尋問中に「居眠り」をする被告人に対して、阿部文洋裁判長(53)が、思い余ってかけた言葉です。
証人とは、元幹部「新実智光」。
被告人は、元教祖「松本智津夫」。
そうです。これが世界も注目しているはずの「オウム真理教」裁判の「真実の姿」というわけで、 身の引き締まる思いで臨んだはずの阿部裁判長も、さすがに忍耐の限界を超え、「教育的指導」に及んだということなのでした。
刑務所に入りたいのなら、放火のような重大な犯罪でなくて、窃盗とか他にも・・・。
「常習者」には「外」の風のほうが冷たいので、早く「塀の中」に戻りたいという理由だけで、 出所直後に「犯罪」を犯してしまう人も多いわけです。 で、重要文化財の神社に火をつけてしまったという男に対し、ついうっかり「アドヴァイス」してしまったんですね。
暴走族は、暴力団の少年部だ。犬のうんこですら肥料になるのに、君たちは何の役にも立たない産業廃棄物以下じゃないか。
というのは、少年審判における「説諭」の言葉のようですが、ここまで「過激」だと、 裁判官の方が「名誉毀損」で訴えられてしまわないかと心配になります。 暴走族から足を洗おうとしただけの少年に、集団で殴る蹴るの暴行を加え殺してしまったという、卑劣極まりない所業に対するものですから、 「よく言ってくれた」と拍手喝采を送った人も多かったようですが。
というわけでこの本は、「裁判傍聴マニア」を自認する著者が、審理中に耳にした「ひとこと」や、判決に添えられた「お言葉」の数々を、 実際の法廷で拾い集めてきたものなのでした。
「裁判官1人が1年間に新たに受け持つ裁判の件数を単純に平均すると、約129件(2004年)」
という、超多忙なスケジュールで、時には人に恨まれるような悲しい宿命を背負いながら、淡々と機械的に判決を下すのが、 出世する裁判官のあるべき姿と言われていますが、どうしても付け加えずにはいられなかった「お言葉」の中に、 裁判官の秘められたお人柄と、鬱屈した思いが垣間見えてくるようなのです。
今、ちょうど桜がよく咲いています。これから先、どうなるかわかりませんが、せめて今日一晩ぐらいは平穏な気持ちで、 桜を楽しまれたたらいかがでしょうか。(元内閣官房長官・村岡兼造に対する無罪判決への付言)
2007/12/13
「<現代家族>の誕生」−幻想系家族論の死− 岩村暢子 勁草書房
「娘は私のやることをずっと見て育ってきた子だから、ちゃんと分かっていて、同じことをしていると思います」 と自信をもって語った母親(62歳)の娘(30歳)は、調査した1週間のうち3分の1以上、 実家に帰ってこの母親が作ってくれたもので食事しており、あとの日は実家から貰ってきたものと冷凍食品、 コンビニ弁当などを使って自分ではほとんど作っていない。聞けば「実家で食べるとき以外は、残り物が出ないようにしているから」と言う。 母親が思っているように実家で食べているものと同じようなものを家で作っているわけではないのだ。
「いま、ごく普通の家庭の日常の食卓は、想像を絶するほど凄まじく崩れ、激変している」ことを、あからさまに示してみせてくれたのは、 いささか意地の悪い調査「食DRIVE」(@アサツーディケイ)だった。
『変わる家族 変わる食卓』
今度は、そこで紹介した「食卓の作り手である現代主婦」の「本当の母親」に、詳細な個別面接調査を試みるという、 その名も『親の顔が見てみたい!』調査。
「ヒドいですねぇ。食事はもっときちんと作らないと駄目ですよ」
「これは、子供のころからいい加減な食生活してきた特殊な人でしょう」
と、ため息をついて論評してみせたその食卓こそが、自分の実の娘の家庭の、それも日常の食事風景であると聞かされて「のけぞる」母親に、 しつこく追跡インタビューするという、これは「さらに意地の悪い調査」の結果報告書なのである。
・「帰宅が5時過ぎたら夕食は出来合い物を買うと決めている」
・「料理は手を抜こうと思えば抜けるから、できるだけ手をかけないのがポリシー」
・「お弁当作りは15分以内でしたいから、解凍せずに詰められる新しいタイプの冷凍食品をまとめ買いしている」
と、悪びれることもなく、あっけらかんと語る娘たちに、
「昔ながらの食事をきちんと作る母親世代に育てられながら、なぜいま急に現代主婦たち(娘世代)は激変したのか」
と聞いてみたいって?とんでもない。
「ウチの娘がこういうことをするとは考えられません」と語る母親世代に、自らの「子供のころからの生育歴」「受けた教育、親からの躾け」や、 「家庭作りの考え方」「子育て、子供の教育」などを語ってもらう中で、次第に明らかになってきた驚愕の事実とは、
母親たちが「私のやってきたこと(食事作り)を娘は見て育っている」はずだから「そんなことありえない」と、異口同音に主張している、 まさにおっしゃるとおりに、
この悲惨な食卓の風景を演出している「現代主婦」の「娘」たちは、確かに
「アナタ(母親)のやってきたこと(食事作り)を見て育ってきた」
と言う事実だったのである。
「食」は「今のおばあちゃんたち『まで』は昔ながらだった」のではなく、「今のおばあちゃんたち『から』変わった」 と言う方が正しいのである。現代主婦の作る食卓と比べてそれがいかに昔風に見えたとしても、歴史的に見れば母親世代は 「昔ながら」を否定して、日本の家庭の食に歴史的転換をもたらした人々だと言わなければなるまい。
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