徒然読書日記200402
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2004/2/29
「蹴りたい背中」 綿矢りさ 文芸春秋
2004/2/28
「蛇にピアス」 金原ひとみ 文芸春秋
改めて言うまでもなく、本年度超話題の「芥川賞受賞作」。(おかげで毎号愛読している文芸春秋が売り切れて大迷惑、市内の本屋を探し回ってようやく入手できた。) こうやって2作いっしょに取り上げることが、既に戦略にはまっているようでもあるが、2本で「合せてイッポン」芥川賞!という感は、誰も否定できないような気もする。 で、肝心の中身であるが、これが外見?通り、まさしく対照的なのである。(ただし、印象とはまるっきり180度逆転して、という意味で・・・)
つまり、見た目がど派手な印象で、テーマも過激に見える金原が、実は「背負いイッポン」柔道一直線の純情派だとすれば、 見た目清楚で、ありきたりの日常を描いたように見える綿矢は、本当のところは渋く「寝技でワザアリ」の技巧派という印象なのである。(ウゥ〜、柔道の例えから脱出できなくなった!) ということで、この二人、史上最年少という呼び声に、我々が期待するイメージとはかけ離れ、意外にまっとうな「芥川賞作家」の誕生と見た。(もちろん、それがいいか悪いかは別にして。)
2004/2/14
「フューチャー・イズ・ワイルド」 Dディクソン ダイヤモンド社
浮き袋を肺に変えて空を飛ぶ「タラ」、進化した腹足でホッピングして砂漠を駆ける「カタツムリ」、背中にしょった藻類で光合成をして生きる「ゴカイ」。 すべての大陸が一つに集まり、一つの海に囲まれた巨大大陸「第二パンゲア」を形成することとなった、二億年後(!)の地球では、体重8トンの巨大な「イカ」が 地上を闊歩し、地上最後の哺乳類は巨大化した蜘蛛の「家畜」(餌)と化していた。(人類がはるか以前に絶滅していたのは、せめてもの救いだった。)
これは絵空事ではなく、世界の一線級の生物科学者による、膨大なデータの正確な検証に基づいた、鮮やかな地球の未来像である。豊富な画像(とても想像とは思えないほど真に迫る)を見ているだけでも 心躍る、衝撃の一冊である。
2004/2/12
「現代老後の基礎知識」 井脇祐人 水木楊 新潮新書
あなたは何歳で定年ですか?それは何年後ですか?あなたの年金は何歳からいくら出るか知っていますか?それまではどうやって暮らしていくのでしょうか?
あなたが現在何歳であろうと、以上の質問に対しては、あなたが思っている以上に「正確」に回答することができる。つまり、結論はもう出てしまっているわけです。 「ンなこと言ったって、年金制度なんて破綻するかもしれないじゃないの」ですって?でも、そんなこと言い出せば、宝くじに当たるかもしれないし、 第一、定年前に死んでしまうかもしれないわけですからね。それは確実に訪れようとしているあなた自身の未来を、直視したくないという自己逃避の表れなのです。
というわけでこの本は、2005年に定年退職する小寺さんという具体的なモデルを想定し、年金、保険等の老後の問題を極めてわかりやすく、ということは 「身につまされるように」これでもかと描き出してくれた本です。もちろん、あなたも小寺さんと同様に、あなたの老後の物語を描くことができます。 それは小寺さんとはまったく別のストーリィーとなるでしょう。そのお手伝いをするのが、ファイナンシャルプランナーというお仕事で、実は私、その資格持っているのですが・・・
2004/2/11
「そして殺人者は野に放たれる」 日垣隆 新潮社
著者が本書を執筆するに当たって採用した原則がこの本の性格を明らかにしている。
「証拠上も明らかで本人も自白している殺人者は実名表記」 「本人または遺族の許諾がある場合にのみ被害者を実名表記とする」
考えるまでもなく至極当然と思われるこの原則が、この国ではなぜかまったく現実と相反する立場となる。
「日本の警察やテレビや新聞は、犯罪が異常になればなるほど犯人の名を隠し、なぜか被害者の実名だけは許可も得ず報じる、という傾向が今も続いて」いるのである。 そして殺人者が「精神障害者」であり「責任能力」がないと判定されれば、凶悪犯罪は「なかったこと」とされてしまうのだ。
当たり前の話ではあるが、「精神障害者」の大半は犯罪を犯さない。にもかかわらず、「覚醒剤中毒者」や「異常酩酊者(酔っ払い)」と同列に、「責任能力なし」として 「犯した罪を問わない」というのは、重大な侮辱であり、逆差別ではないのかと、強い憤りを感じさせられた快著である。
2004/2/11
「ナンシー関大全」 ナンシー関 文芸春秋
ナンシー関の背中にはファスナーが付いていて、自宅に帰って着ぐるみを脱ぐと・・・中から、小ぶりのナンシー関が出てくる。という悪夢のようなブラックジョークを聞いたことがあるような気がしますが (そういえば、ミスチルにもそんな歌があったような)こんな情報以外には、われわれ建築学科卒の人間にとっては「神聖な」あのステッドラーの消しゴムを、惜しげもなく日本一消費する「消しゴム版画作家」である ということ以外、ほとんど知らなかったのだけれど
「誰がテレビを観ているのかよくわからない」・・・土曜午前中のテレビは独特である。私はかねてからこの独特を「呑気」という言葉で認識してきた。・・・その本質とは「無批判主義」にある。とにかく批判などしない。 何に対してでも「善意・好意」のみで接する。・・・そう。土曜の午前中は「ヨイショ」ゾーンなのである。
素人が自分のこだわりをテレビでとうとうと喋る機会に恵まれるなど、夢のような僥倖ではないのか。それもネタは「家」である。部下を無理矢理招いて陰で嫌な顔をされたって語りたい、見せたいこだわりを、 渡辺篤史がテレビカメラとともにやって来て聞いてくれるのだ。・・・渡辺篤史は確実に学習してきている。今や建ものに関しては、ただの素人ではない。建主の「こだわりのツボ」を的確に見つける技は見事である。 ・・・テレビというメディアの構造に頼らず、自らの腕一本で勝負する渡辺篤史を、土曜午前ヨイショ合戦の王者と呼びたい。
確信的な自己責任に裏打ちされた、極上の、お手製の、辛口のコラム。小ぶりのナンシーの背中にもうファスナーは付いていない。私たちが失ってしまったものはあまりにも大きい。
2004/2/6
「ルポ解雇」 島本慈子 岩波新書
(問)(労働組合は必要ではないということですが)会社と個人は対等でありえますか。
(答)どうしてでしょう?辞める権利はあるし、入社しない権利もある。お願いしますといって、来ていただいたわけじゃない。いやだと思ったら、いつでも辞められるでしょう。 日本はまだ豊かな国です。いくらでも勉強する機会がある。そして能力をつければ、いくらでも働く場所があります。
「構造改革」に名を借りた解雇規制の緩和の動き、「契約社員」へのシフトとそれに伴う「不当解雇」の陰湿さ、労働者側に圧倒的に不利な労働裁判の実態等々、 生々しいルポを読まされてきた後での、宮内義彦へのインタビュー。著者の意図がどのあたりにあるのかにかかわらず、これを(零細とはいえ一応)経営者である私は、極めてまっとうな正論であると確信する。 むしろ話は逆で「すべきとわかっている解雇に、心情的に踏み切れない。」ことこそが、われわれ中小零細企業の弱さなのに、という「隔靴掻痒感」が最後まで付きまとう本であった。
2004/2/6
「50イングリッシュ」 Sパク ダイヤモンド社
性懲りもなく、また「英会話ハウツゥ本」に手を出してしまいましたが、これはむしろ「記憶術ハウツゥ本」として結構お奨めです。 頭の中に「50のアドレス」を作るというもので、一旦作ってしまえば、何も英文でなくても、そこに何を収納するかは本人次第というわけなのです。 ここのところ、めっきり短期記憶が怪しくなってきたことを自覚しておりましたが、50の英文、お蔭様で2日で覚えてしまいました。お試しあれ。 (続編でさらに50、合わせて100のアドレスができるようで、それだけあれば、なかなか重宝な代物と思いますが・・・)
2004/2/4
「ヨットクラブ」 Dイーリィ 晶文社
原子力事故で消滅したイギリスの復元計画に動員された歴史学者の苦悩を描いた「タイムアウト」
自分が神であることに気づいた男が始めた通信事業「GODの栄光」
互いの存在を無視しながら無言の同居生活を続けてきた夫婦の始めた奇妙なゲームが、超自然的な恐怖を呼び寄せる「夜の客」・・・
この本に納められている15の短編の主人公は、多くはごく普通の人物であり、そこで展開されるストーリィーも、どこにでもありそうなお話である。 少しずつ「のっぴきならない」状況に陥っていく場合もあるが、それも(おかしな言い方だけれど)普通の「のっぴきならなさ」である。 それだけに、最後の数行で、突然引きずり込まれる「理不尽」な世界の衝撃度は大きい。 これは痛烈なブラックユーモアの世界であり、極上のチョコレートのような口当たりの「苦さ」が、超お奨めの逸品である。
2004/2/3
「ゲーム理論トレーニング」 逢沢明 かんき出版
「囚人のジレンマ」という有名な問題がある。
2人の共犯者がいて、隔離されて尋問を受ける。まだ証拠不十分なので、お互いに黙秘を通せば、2人とも懲役1年で済む。 ここで検事が自白すれば無罪にしようと提案する。ただし、その場合、共犯者は懲役3年となる。当然、自白した方が有利であるが、共犯者も同じように提案を受けていて、自白するかもしれない。 その場合は、2人とも懲役2年となってしまう。さぁ、自白する(協調)か、黙秘する(裏切り)か?あなたならどちらを選びますか?
「囚人のジレンマ」最強戦略というものがある。ただし、同じ設定で20回繰り返した場合に一番いい結果が出るというもので、1回きりの必勝法ではない。で、その方法とは・・・
コンピュータープログラムによるコンテストで1位に輝いたのは、とりあえずは「協調」でいき、相手が裏切ったら次は「裏切り」で「しっぺ返し」をする、という戦略だった。 そして驚くべきことに、このプログラムは参加したどのプラグラムにも勝てなかった、「でたらめ」という戦略にすら負けてしまったのである・・・? にもかかわらず最強戦略とは?そう、誰にも勝てず、よくて引き分けのこのプログラムは「大負け」しないことで、総合的に1位となったのである。 うぅ〜む、なかなか奥が深いぞ、ゲーム理論! というわけで、この他にも、様々な駆け引きの手練手管を学べる、お奨めの1冊です。
2004/2/1
「ユークリッドの窓」 Lムロディナウ NHK出版
ユークリッド幾何学は二千年の長きにわたり、外に向かっては世界を見せてくれる窓であり、内に向かっては論理的思考の基礎だった。
この本に取り上げられたのは、幾何学の歴史におこった革命の5つシーンを象徴する5人の人物である。
空間の概念を抽象化するという「幾何学」の基礎を築いた ユークリッド
幾何学と代数学を統合し座標幾何学という「位置の革命」を起こした デカルト
平行線は交差するのか?平行線公準というユークリッド幾何の汚点に挑み「曲がった空間の革命」を起こした ガウス
何が空間を曲げるのか?新しい数学的空間を用いて、我々の生活する物理的空間を説明するという「光速革命」を起こした アインシュタイン
空間は宇宙の器にすぎないのではなく、宇宙を構成する物質とエネルギーの性質を決定するという「ひも理論」により革命を起こしつつある ウィッテン
自分が生息している世界に生起する現象を、正確に記述する法則が存在し、それを記述する理論を構築できる同時代人が存在しているということは、著者が指摘するように、素晴らしいことであろう。 しかし一方で、私たちは自分に理解可能な理論でしか、世界に生起する現象を理解できない。ひも理論が「世界は10次元」を主張しようが、私にとってはこの世界は最大4次元で、空間は曲がっていない。 私の家の「ユークリッドの窓」には、いまだに無色透明の単板平面硝子が嵌ったままなのである。
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