- 2002/9/25 「ぬりつぶされた真実」 JCブリザール Gダスキエ 幻冬舎
- 「ブッシュはテロ発生を事前に察知していた」「テロはアフガニスタン空爆を正当化するためにブッシュが仕組んだ」という「大統領の陰謀説」が後を絶たないのはなぜなのか?
ブッシュ一族はテキサスの石油業界の名門であり、アフガニスタンの石油利権を背景にビンラディンの引渡しをめぐって、タリバンとの交渉を続けていたことは事実なのであり、
そうしたブッシュ政権のタリバンとの秘密外交の失敗が、テロを導いたということは、あながち否定できない。ただそこに、サウジアラビアを始めとした近隣諸国の宗教的思惑や、
イスラム過激派に資金援助する国際金融ネットワークの存在が絡み・・・つまりは、オサマ・ビンラディンの逮捕を望まない多くの存在があるということなのである。
- 2002/9/15 「生きる」 乙川優三郎 オール読物
- 本年度直木賞受賞作。たまたまテレビで昔の時代劇(「遠山の金さん」「鬼平犯科帳」など)をやっているのに遭遇し、思わず引き込まれて最後まで真剣に見入ってしまった。
という経験はありませんか?何となく濃すぎて遠慮しがちだけれど、思い切って口にしてみれば何のことは無い、今時流行りの、味も素っ気も無いような料理を、薀蓄を傾けながら無理やり賞味するよりは、
よほどお口にあっているというものです。お味の方は私が保証しなくとも、直木賞審査委員のお歴々の保証付です。
- 2002/9/14 「パーク・ライフ」 吉田修一 文芸春秋
- 本年度芥川賞受賞作。有楽町マリオンをケーキにたとえて、真っ二つに切った日比谷交差点の断面図。(ダ・ヴィンチの性交中の男女の断面図からの触発か?)
その鮮烈なイメージの提示こそがこの作品のすべてであったような気がする。しょせんはすれ違いの場所でしかない昼間の日比谷公園の群像のスナップ。
「大丈夫よ。あなたが見てるものなんて、こっちからは見えないから。」という世界の断面図。とすれば、最後の日比谷公園の俯瞰図のイメージは何かが始まろうとしていることを予兆しているのだろうか?
- 2002/9/14 「天才と分裂病の進化論」 Dホロビン 新潮社
- ノーベル賞受賞者や芸術家など、いわゆる天才の家系には、精神分裂病(最近「統合失調症」に変更された)の患者が多い!という驚くべき事実から、
突然変異による分裂病遺伝子の獲得こそが、現生人類を類人猿から進化させたという推論(今のところは)にたどりついたという、とても刺激的な快著である。
詳しくは本書をお読みいただくとして、大事なことは二つ。突然変異による脳内の生化学的変異が精神の病と同時に優れた知性を生み出したということ。
そして、その変異はリン脂質代謝のごくわずかな損傷に過ぎず、食習慣の変遷によって制御不可能となり発症したのではないかということ。
つまり、精神分裂病が現在のような破壊的なものから、制御可能な「創造的異常」になる日がくるのではないかということである。
- 2002/9/5 「親日派のための弁明」 金完燮 草思社
- 個別に付き合えばむしろ親日的な人の方が多いように感じるし(それほど付き合いがあるわけではないが)
それは上っ面だけで、本心は違うというのではないような気がする。かといって、ごく一部の声の大きい人の「反日論」だというのでもない。
日常の生活や付合いの中での話は置いておいて、議論として日韓の関係を捉えた時の反日感情。
つまりそれは「言論の規制」や「歴史の歪曲」「偏向教育」によって作られた、極めて観念的なものなのである。
こんな内容の本が韓国人の手で、韓国で出版された(もちろん有害図書の指定により、事実上販売禁止)ということは驚くべきことではあるが、
むしろ、日本の「自虐史観」問題を語る際の一つの参考書として、日本人必読の書であると思う。
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