- 2002/7/31 「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」 JEスティグリッツ 徳間書店
- 世界経済の安定と発展途上国の援助を使命とするIMF。経済危機に陥り、IMFが介入してきた時、国家としてとるべき最良の戦略とは何か?
答え。IMFの指示する政策の逆を行くこと。実際、東アジアに経済危機が発生し、IMFが介入した際、他の国が勧告に従って更なる泥沼にはまり込んでいくのを尻目に、
唯一IMFの勧告に逆らったマハティールのマレーシアのみが最小限の被害で経済危機を脱却したのである。IMFは悪気があって言っているわけではないだろう。
ただ、その国の立場に立って、その国にとって最良のアドヴァイスを行っているわけでも決して無い。貿易の自由化や民営化が将来的発展にとって避けられない道であるとしても、
今、性急に進めることにメリットがあるのは、IMFの立っている側の論理であり、それこそがグローバリズムなるものの正体である。
- 2002/7/28 「お笑い日韓決別宣言」 テリー伊藤 実業之日本社
- 「無理して仲良くしなくても、いいじゃん?」という帯の売り文句が、今の私の気分にぴったりで、とても気に入って購入しました。
内容はどちらかというと「どうすれば無理なく仲良くできるか?」という無難な方向に流れがちなのでかなり期待はずれでしたが。
まあ私なりの考えとしては、「隣同士だから仲良くしよう」なんてことより、国家同士が国をあげて仲良くする必要などどこにもありはしない。
という一言に尽きるので、「惚れてもいない女」から「誠意が足りないから嫌い」といわれても困ってしまうのが普通ではないかということに、
どうしてあの国の人たち(もちろんごく一部とは思いますが)は思い至らないのだろうかということなのです。
- 2002/7/27 「一葉の四季」 森まゆみ 岩波新書
- 少し前に、高橋源一郎が朝日新聞に連載していた「官能小説家」という異色の小説は、森鴎外や夏目漱石が現代に出没するという破天荒なストーリィと平行して、
樋口一葉と半井桃水の愛と憎しみの葛藤劇が展開されるわけですが、こちらも当然フィクションと思っていました。(半井桃水なんて聞いたこともなかったわけですし)
というわけで、若くして一家を背負う立場となっってしまった一葉の、人から見れば「貧困と悲恋」という不幸に打ち負かされてしまうことも無く、
明治という時代の知っているはずも無いのに何故か懐かしい原風景と、「こよみ」(行事)に裏打ちされた季節感を、名文で楽しむことができました。
- 2002/7/7 「現代思想の遭難者たち」 いしいひさいち 講談社
- 「いしいひさいち」というのはもちろん「がんばれタブチくん」のあのいしいひさいちで、これはもちろん漫画ですが、これほど熟読を強いる漫画を私は知りません。
近現代の著名な哲学者・思想家を、概ね5ページの4こま漫画でなで斬りしているわけですが、そのわかったようでわからない具合のほどよさが、とてもいいのです。
変な概説書を読むくらいならこちらの方がよほど要点を掴んでいるような気がするし、さすが風刺のプロなので、突っ込まれたくない部分もしっかり押さえてあります。
もちろん原著を読んでいないわけなので、「恐らく当たっているような気がする」という意味ですが、これは「いしい」の方も同じではないかと思います。
- 2002/7/6 「偽書「武功夜話」の研究」 藤本正行・鈴木真哉 洋泉社
- 秀吉の「墨俣一夜城」は作り話だった?NHK大河ドラマの二文字シリーズ「信長」「秀吉」(「利家とまつ」も二文字*2)の原作者(津本陽、堺屋太一等)が
無批判にタネ本とした、稀代の発掘本「武功夜話」。冷静に分析を進めていくとどうも「偽書」であるらしい。読めば読むほど、議論するのがばかばかしいほど明らかな話なのだが。
例の「発掘偽造」にしたところで、「冷静に考えれば」とか「当時既に批判の声はあった」などという話は後から出てくるわけで、どうやら時の権威に逆らってまで、まともな論議を
することは損になるという風潮こそが、こうした事件を生むのだろう。
- 2002/7/5 「常識として知っておきたい日本語」 柴田武 幻冬舎
- たいした本ではありませんが、トイレに置いておいて、家族に感謝された数少ない本の一つとしてご紹介しておきます。
それにしてもこの本は、一昔前の息の長いヒット作を、今回の日本語ブームに乗っけて大ブレーク。幻冬舎の嗅覚にはいつもながら脱帽です。
問題、「そりが合わない」の反対語は何か?答え、「元の鞘に納まる。」
- 2002/7/5 「転んでもタダでは起きない経済学」 長谷川慶太郎 幻冬舎
- 2002/7/2 「2003年日本国破産[衝撃編]」 跡田真澄・浅井隆 第二海援隊
- 2002/7/1 「投資戦略の発想法」 木村剛 講談社
- 日本国債の格付けが、ボツワナよりも低いという現実を突きつけられると、これはもう、グローバル化という名のアメリカ化の陰謀だなどとほざいている暇もなく、
日本という国を捨ててしまえという逆説的なアジテーションが、どうも本気に受け止められはじめているような気配を感じる。
会社と同じで、一度破産してしまった方が、案外苦労は少ないのかもしれないと、他人事ではなく想いを巡らす今日この頃である。
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