- 2001/11/25 「マッサージ台のセイウチ」 Aグリエルモ 早川書房
- 「馬だって肩は凝る?」れっきとした人間専門のマッサージ師が、ひょんなことから馬の治療を依頼されたことから、
犬、猫、豚はてはイルカからセイウチまで、揉み解すことになったというお話。それぞれの動物が見せる至福の表情が目に見えるようで、
こちらの凝りまで解れるような気分。
- 2001/11/19 「将棋の子」 大崎善生 講談社
- 前著「聖の青春」の周辺で展開された、もう一つ別の、それぞれの死闘と挫折の物語。
囲碁の学生チャンピオンはプロになり得ても、将棋の学生チャンピオンにはプロ入りは不可能。
という話を耳にした記憶があるが、将棋に求めれられる「天才性」は、「奨励会」という苛烈なシステムの中で
幼い頃から選別され磨きこまれるわけで、そこにこうしたドラマが生まれる所以があるのだろう。
- 2001/11/17 「謎の大王継体天皇」 水谷千秋 文春新書
- 万世一系の天皇家の家系断絶の危機。これが最近の話題ではなく、過去にもあり、
それが「継体天皇」というわけで、名前からして意味ありげで(もちろん死後の諡号ですが)どうもここで一度途絶えたくさいという噂は聞いたことがありました。
この本はそのあたりの謎の解明に挑戦しており、途絶えたのではなく5代遡って子孫を探したということらしい。
ところで、今回の「愛子さま」ですが、もし女帝がだめということになると、5代遡ると孝明天皇(明治天皇の父)の子孫まで視野に入る?
それって日本人の何%を含みますか?くらいの遠さではないのか・・・というのは不敬罪でしょうか。
- 2001/11/11 「暗号解読」 Sシン 新潮社
- 前半は「暗号の歴史」ということは「解読の歴史」というわけで、私にも解けるような簡単な置換型の暗号(ポーの黄金虫ですね)から有名な「エニグマ」まで、
そして暗号解読といえば、古代文字の解読(ヒエログリフ、楔文字など)ということで、解読の方法論が素人にもわかりやすく、懇切丁寧に解説されていてこれだけで充分に面白い。
ただ圧巻は後半部分、解読ほぼ不能の暗号技術の解説で、これが目から鱗の面白さ。
たとえば、インターネットの暗号化の技術。基本は素因数分解なのだそうで、91=7*13というやつですが、なるほど16桁の数字を与えられれば、少なくともその平方根(8桁程度)までに
含まれる素数の数だけ割り算を実行する時間が必要で、これが10の何乗というスケールの2個の素数の積ということになれば、コンピューターでも不可能ということらしいです。
- 2001/11/4 「死の病原体プリオン」 Rローズ 草思社
- 3年ほど前に読んだ本ですが、今回の「狂牛病」騒ぎでまたベストセラーになったので、引っ張り出して再読。狂牛病の原因といわれている「プリオン」というのは、ウィルスや細菌ではなく、たんぱく質の一種で、「共食い」によって伝播していくらしい。「羊」「牛」そして「人間(身内の死後の食人を習慣としている部族)」に似たような症例が発生し、それぞれの脳から同種のたんぱく質「プリオン」が発見された。
「共食い」という自然の摂理に逆らった行為が、本来存在すべきでない物質を生み出してしまった。という内容だったと記憶していたのですが、今回再読してみて強く感じたことは、日本で今起こっている大騒ぎと同じようなことが、このとき既にイギリスで巻き起こっていること。(新進気鋭の国会議員が牛肉は安全だと皆の前で自分の愛娘に食べさせたというあたりは、日本の国会議員との覚悟の違いを感じさせてくれましたが・・・)
この時点で、私ですらこの本を読んでいるのだから、農水省の役人なら大半がもっと真剣に読んでいたはずで、知っていて今回の事態を招いたということの罪の大きさは計り知れないように思います。
- 2001/11/4 「13階段」 高野和明 講談社
- 江戸川乱歩賞受賞作。死刑囚の冤罪を晴らし死刑の執行を阻止するという期限と報酬つきのミッション。設定の奇抜さにもかかわらず、内容はきわめてオーソドックスな謎解物といってよいと思う。
登場人物の様々な決して軽いとはいえないヒストリーが、ある時点のある場所に収斂していくことで、話は盛り上がっていくわけではあるが、少しばかり強引に(或いはお手軽に?)話が運ばれていくために、
折角のクライマックスのどんでん返しが先読みできてしまって興醒めの部分もある。最近では珍しい、余韻の残らない、一気に読める一品である。
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