- 2001/9/16 「漢字道楽」 阿辻哲次 講談社選書メチエ
- その一つずつが「意味」と「音」を持ち、組み合わせることも可能ということで、多様な広がりを見せる漢字の世界。
この本は、印刷会社に生まれ、幼いころから植字を手伝うことで鍛えられたという、NHK「日本人の質問」でもお馴染みの漢字の権威による、極上の漢字世界探検記である。
コンピューターの進歩が、漢字を無理なく使用できる域に達した今、ピクトグラム(或いはアイコン)としての漢字の秘めた可能性が注目されてくる。
ということは、漢字を本来の機能のまま使用しつづけている文化が二十一世紀を席巻することになる。とまでは書かれていない。
ここで問題。「卍」という字は何画か? 答え。「十」の部に属するので十に羽根四枚で六画が正解!
- 2001/9/15 「蜃気楼文明」 Hトリブッチ 工作舎
- 「ナスカの地上絵」は誰が何のために描いたのか?世界各地に残る巨石文明の遺構。モアイ像、ストーンヘンジ、ピラミッド。多大な犠牲と引き換えに、これらはいったい何を得ようとしたものなのか?
宇宙人の足跡説まで論じられた古代の遺跡群を、蜃気楼に映った地上絵というたった一つの体験から、かって蜃気楼を宗教的背景とする文明があったと言いきり、その存在を前提に謎を解き明かしたと豪語する怪著。
確かに、地上絵は普通の人間の視点からではその全体像を把握することもできず、蜃気楼として立ち上がった虚像に真の意味を見出すという仮設は画期的。ただ何でもかんでも「蜃気楼」に結び付けていこうとすると、オイオイという感じになるような・・・
- 2001/9/8 「挨拶はたいへんだ」 丸谷才一 朝日新聞社
- 挨拶の達人と名高い著者が、様々な場所と機会に応じて、実際に行なった当意即妙のスピーチ集。といいたいところだが、驚いたことに、挨拶の名人の秘訣はどんな場合も原稿を用意し、それを読むというところにあるらしい。
考えてみれば、大勢の人の時間を奪う権利を与えられて行われる挨拶が、行き当たりバッタリのその場しのぎや、なぜそこに立つことになったかの自慢話では、聴いている方はたまったものではない。(そんな挨拶のなんと多いことか。)
とにかく一つ一つが珠玉の短編小説のような出来栄えで、実は不謹慎にもトイレに置いて読んだのだけれど、ついつい読み進んで家族の不興を買うことになった。
先頭へ
前ページに戻る