- 2001/6/30 「慶応三年生まれ七人の旋毛曲り」 坪内祐三 マガジンハウス
- 尾崎紅葉、幸田露伴、斎藤緑雨、夏目漱石、正岡子規、南方熊楠、宮武外骨。
この一筋縄では行きそうもない明治のツワモノ達に共通する点は何か?それは明治という時代と同年齢を生きた、つまり明治元年に満1歳を迎えた同級生というところにある。
この驚くべき「発見」。それぞれの人生の軌跡の微妙な交錯とすれ違いを、時代背景とともに活写した「中味」の方はほとんどおまけのようなものだった。
- 2001/6/24 「奇術探偵曾我佳城全集」 泡坂妻夫 講談社
- 昨年度和物ミステリーで最優秀を総なめにしておりましたが、奇術物という特殊なジャンルながら、本格謎解きの王道を行っていて、
二十数年に渡ってようやく完結した(しかも若干破綻するとはいえ、ちゃんと伏線が仕込まれている)という歴史の中に、その時代のミステリーの雰囲気の変遷が反映されているところが郷愁を誘いました。
ただ、トリックそのものは何となく底が浅いような気がしたのは、最近の推理物の底が深すぎるせいかもしれません。
- 2001/6/14 「アホー鳥が行く」 伊集院静 双葉社
- 伊集院静という人については「アフリカの絵本」買おうかなと思った程度で「海峡」三部作など知る由もありませんが、
西原理恵子に関しては「ぼくんち」で衝撃を受けて以来、単なる博打好きの漫画家ではあるまいと認識していたわけで、
ということは、伊集院静も単なる博打好きの小説家ではないのかもしれませんが、
競馬・競輪に全く興味のない者にとっては、西原の挿画以外取り立てて論評すべきところのない恐るべき本でありました。
- 2001/6/3 「わがままな脳」 澤口俊之 筑摩書房
- 脳細胞は誕生の時が最大であとは恐るべき速さで減りつづけていく。という事実は、老化によるボケ予防の話題に持ち出すような話ではない。
それは実は、脳が周辺の環境に適応して不要なものを切り捨て、最適化していくプロセスである。
つまり、生まれたばかりの脳は何にでもなりうるようにできていて、生れ落ちた環境に合わせて自らをスリム化し、スピードアップしているわけである。
従って、言語機能が確立する時期までにバイリンガルの環境になかった人は、外国語を母国語の脳内システムで理解する以外に方法を持たないことになる。
(バイリンガルの環境で育った人にはA語用とB語用の2種類の脳が出来上がると言ってもよい)
多重人格というのも、どうやら脳の中にそうした複数のシステム=「私」があるということになるらしい。
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