- 2001/3/25 「長嶋はバカじゃない」 小林信也 草思社
- 物心ついたときからの長嶋ファンとしては、「バカじゃない」ときっぱり言い切られると、やっぱりバカだったのかと思ってしまうのですが、
昨年の「4月20勝10敗宣言」は、圧倒的戦力を誇る巨人がわざと他の5球団に包囲網をひかせ、手薄な戦力を疲弊させて、夏場を楽に乗り切るための戦略だった。
(その割には真剣に苦労していたように思いますが・・・)日本シリーズ冒頭の2連敗は20世紀ON対決シリーズを盛り上げるために、負けにいった。
などなど、あながち巨人ファンのたわ言とは思えない深〜い洞察に富んでいて、「ひょっとしたらバカじゃないのかもしれない」と思ったとか、思わなかったとか。
- 2001/3/24 「がんばらない」 鎌田實 集英社
- 病気を治す技術としての医学が高度に進歩してくる中で、見失い、切り捨てられてきたもの。それは「生きがい」と「死にがい」ではないか。
田舎のつぶれかけた病院が、地道な地域密着の活動を続ける中で、ターミナルケアと在宅訪問看護の最先端に位置付くようになるまでの歴史。
「こんな病院が欲しかった」という患者の側に立った医療の実践は「病気を治して人を殺す」現代の医学に向けられた、さりげなく大きな疑問符である。
- 2001/3/19 「失敗学のすすめ」 畑村洋太郎 講談社
- 「失敗の本質」「敗因の研究」。誇らしげな成功談を聞かされるより、失敗の体験を聞く方がヒントも得られるし、楽しい(?)ことは誰もが経験することですが、
いざ自分の失敗を「学」として分析的に語ることはとても難しい。どうしても甘えや、責任転嫁がはいってしまうから。
しかし、分析できなければ次のステップへの応用はできない。「こうすれば失敗する」というメカニズムの解明は「過去の犯人を探す」ために行われるのではなく、
「未来をブレークスルーする」ために行われなければならない。というのが「学」たる所以。
- 2001/3/17 「濁った激流にかかる橋」 伊井直行 講談社
- ディテールの詳細な記述からイメージされたクリアな部分像。しかしそれを部品として組み上げていっても、この「橋」の全体像をイメージすることはできない。
「激流」に切り裂かれ、全く異質な町に二分された都市。それをつなぐたった一つの異形の「橋」はまた、
説明されればされるほどこんがらがってくる縁戚関係や、描写されればされるほど想像できなくなる登場人物の顔かたちなど、
様々なくんずほぐれつをかろうじて繋ぎとめるものとしてそこにある。そしてついに大逆流がやってくる!
- 2001/3/10 「金持ち父さん貧乏父さん」 Rキヨサキ 筑摩書房
- 「持ち家は資産ではなく負債である」「利益は売って得るのではなく買って得る」など、ある意味で新鮮な示唆に富む。
50歳までにハッピィリタイアメントを目指す罪のない指南書。誰かが勝てば誰かが負けるという雰囲気ではなく、あなたもわたしもみんなカムカムという感じ?がよい。
「巨泉」(読んでいないのであくまでイメージで申し訳ないですが、まあ読まなくてもね?)よりはためになりそうな本です。
- 2001/3/5 「熊の敷石」 堀江敏幸 文藝春秋
- 芥川賞受賞作。出だしの夢のシーンに興味を掻き立てられ、取り立ててどうというこのない旅行記のようなストーリーを我慢しながら読んでいくと、題名そのままの寓話が出てきて盛り上がりのないまま終わってしまう。
確かにエピソードとしての異国風味や一種不気味な味わいもあるけれど、「朗読者」などと比べてしまえばはるかに物足りない。
まあ、いまどきの「ブンガク」とはこういうものだと納得できれば、わかりにくい部分が皆無なだけ、読みやすいといえば読みやすい。
- 2001/3/4 「聖水」 青来有一 文藝春秋
- 芥川賞受賞作。「オラショ」に代表されるストーリー構築のための材料の配置や道具立てが的確で、論理的に組み上げられた優秀な脚本を読む思いがした。
ただ、演じる役者が大根で、どこに主人公の視点を合わせればいいのかが判らない。
本来魅力的であるべき教祖的存在の存在感が不足していて魅力を感じない。(「法の華」の方がずっと色っぽい。)
あれもこれもと集めた材料を全部使おうとしたせいなのだろうか?
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