徒然読書日記
サーチ:
すべての商品
和書
洋書
エレクトロニクス
ホーム&キッチン
音楽
DVD
ビデオ
ソフトウェア
TVゲーム
キーワード:
ご紹介した本の詳細を知りたい方は
題名をコピー、ペーストして
を押してください。
2024/11/23
「東大地理部の『地図深読み』散歩」―発見! 学べるウォーキング― 東京大学地文研究会地理部 マイクロマガジン社
駒場キャンパス正門からスタートして駒場東大前西口まで坂を下り、坂下門を入ってすぐにあるのが目黒川の支流・空川の湧水池 です。こんこんときれいな水が流れ出ています。
<この巡検は、武蔵野台地の高低差を感じながら、そこに刻まれた谷や河川(跡)などを巡ります。>
というのは、創設70年以上もの長い歴史を誇る「東京大学地文研究会地理部」、通称『東大地理部』が毎年春の新歓シーズンに 挙行する「駒場巡検」である。武蔵野台地の東南に位置する東大駒場キャンパス周辺、総距離約8キロを3時間30分かけて巡り、 地形の謎に挑むという。知的好奇心満載の「散歩」なのだ。
<ここ数年「散歩」がトレンドとなるなか、毎週のように巡検を開催しているわたしたちが、「街歩き」の楽しさを世間に届ける ことができないか>と思案していた東大地理部の面々に、「渡りに船」とばかりに舞い込んできた出版企画とはいえ、この本で紹介 されているのは、すべて実際に開催されたものだ。
「本郷巡検」――台地に築かれた文京地区と区境の藍染川暗渠
台地、低地が入り混じり多くの坂が形成される本郷地区の高低差を体感しながら、「へび道」の歴史を遡る。
「渋谷巡検」――裏渋谷通りの歴史と渋谷川のすごい暗渠
新宿御苑を水源に深い谷を刻む渋谷川と宇田川が合流する、地形的に大問題だった浸水被害克服の歴史を巡る。
「皇居一周巡検」――江戸城の立地や江戸東京の歴史を体感
日比谷入江と呼ばれる遠浅の海を埋め立てた、江戸城東側の江戸の町を守るため開削された外濠川の工事。
「隅田巡検」――歴史濃い下町から急発展する湾岸地域へ
江戸時代に浅草と共に盛り場として賑わった隅田川沿岸部における水と暮らし、災禍と再生をテーマに歩く。
などなど、「地形」や「地質」をメインテーマとし、東京都内やその近郊で開催された16コースの「巡検」が紹介されている のだが、地形の見所は言うに及ばず、「ちょっと寄り道」のポイントや、トリビアな話題ももらさず取り上げて、「ぶらタモリ」も 軽く凌駕するディープな内容なのである。
暇人も少し前になるが、「金沢の歴史を歩く」という探検隊を結成して、裏道を中心に歩いてみた時期があったのだが、実際に歩いて 見なければわからない、新たな「町の魅力」の発掘に、ワクワクドキドキしたことを思い出す。皆さんも、もし歩いてみたいと思える コースがあったなら、どうぞ本書を片手に「地理部の巡検」を追体験されることをお勧めする次第である。
この書籍が、読者の皆様にとって、日頃生活している街を「地理」「地形」といった視点から捉え直すきっかけとなれば、地理 好きの集団として望外の喜びです。
2024/11/22
「英語で日本語を考える」 片岡義男 ちくま文庫
英語による世界と接するとき、その接点の最突端を顕微鏡的に見ると、そこに見えるのは、ひと言、というものではないか。 ・・・そしてひと言を論理的につなげてかたち作るのが、文章だ。
<こうしたひと言というものは、勉強の対象になるのではないか>という考えから、まったくランダムに、誰の日常にもあるような ひと言を百例つまみ出せば、日本語で言うときの日本語らしさと、英語での言いかたをつらぬく英語らしさの、両方の核心の針先と 言っていい部分に、指先を触れるような体験ができるかも・・・
というのが、日系3世の小説家・写真家としての傍ら、英語を母語とする者から見た日本語についての考察を深めてきた、手慣れの 英語使いの感触なのである。
たとえば、TVのニュース番組で、スタジオからアンカーが現場の記者に対して「状況を説明してください」と尋ねる場面。
“Please explain the situation.”
と、そのままほぼ自動的に日本語から英語へと置き換えるスタイルは、日本人の得意とするところだが、もう少し引き締まった 言い方をしたほうがいいという。
“Put me in perspective.”
<explain>では、あなたの喋ったことが説明不足だという意味になるので、その問題の正しい遠近法の中に私を置いてくれないか というのが、英語的なのだ。
「この話を私から聞いたなんて、誰にも言ってはいけないのよ」
なんて、きわめて日常的で平凡な言葉のなかに、英語としてのものの言い方を点検することが、やがて英語に関する勘のようなもの を育んでくれるという。
“Don't tell anybody I told you this.”
英語のできる人なら、この程度の言いかたは無理なくできるに違いないが、「それをするな」という直接的な禁止の命令を、 「そうさせるな」とするのが英語的だ。
“Don't let anybody know I told you this.”
<let>するなという、一度だけ折れ曲がった経路を設けて、命令を相手に作用させる。こういう言い方が、英語にはたいへん多い そうなのである。
<英語能力の習得に向けて勉強していくとき、すべての基本となる最重要なものは、日本語の能力だ。>
およそなにを理解するにしても、それは日本語能力によって培われた自分の頭の中でなされるのだから、高度な英語能力を身につける には、日本語能力は必須である。英語らしい言いかたのなかで実現される、英語という言葉の機能のしかたを、自分の日本語能力と 不可分なひとつのものとして、習得しなくてはならないのだ。
日本語ならではの言いかたと、英語でこその言いかたとのあいだにある距離を、自分の内部に全面的に引き受ける、おそらく 終わることのない作業の積み重ねだけが、日本語能力のなかに英語能力を効果的に移植する。
2024/11/18
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」 塩野七生 新潮文庫
イタリアを統一して、そこに自らの王国を創立しようとした彼の野望は、今日にいたるまでの500年間、歴史が彼を、 ルネサンス時代の「メフィストフェレス」として弾劾してきた理由となった。
<しかし、メフィストフェレスの魅力は不滅である。>
カトリック教理では、聖職者の妻帯は許されていない。だから、法王の息子というキリスト教世界における「異端児」として生まれた チェーザレ・ボルジアが、父である法王アレッサンドロ6世から、法王に次ぐ権威をもつ枢機卿に任命され、“緋の衣"を着けること になったことは、反法王派の枢機卿たちの反感を買った。
にもかかわらず、ローマ教会と法王という最高の権威を徹底的に利用し、姻戚関係を結んだフランス王ルイ12世の全面的援助も 受けて、のし上がったチェーザレが、一度は身にまとった、生涯の栄誉と安定を保証する“緋の衣”を惜しげもなく脱ぎ捨てたのは、 「イタリア統一」という野望に向けての準備が整った23歳の時だった。
というわけでこの本は、たった4年でロマーニャからラツィオまで、イタリア半島のほぼ3分の1手中に収めながら、あと一歩という ところで暗転した、チェーザレ・ボルジアの31年という短い生涯の、「冷えた鋼塊のような存在感と、その奥にひそんだ昏い狂熱を 鮮明に描き出した」(@沢木耕太郎)快著である。
チェーザレが、その短い一生のうちでかかわりを持った二人の偉大なルネサンス人が、マキアヴェッリとレオナルドである。
ニッコロ・マキアヴェッリは、新たに君主になった者が見習うべき人物としてチェーザレを取り上げ、その理念に火を点けられる ようにして『君主論』を残した。
<私は、用意周到であるよりも、むしろ果断である方が良いと考える。なぜならば運命の神は女神であるから、・・・冷静なやり方を する者より、こういう人たちに勝利を得させるようである。>(『君主論』より)
その関心の中でも最大のものは国土計画にあった、レオナルド・ダ・ヴィンチは、チェーザレに理想的な君主を見出した。パトロン ではない。チェーザレを各人の才能と願望を十分に発揮しながら共同の目的を遂行できる友人と見做してくれた、レオナルドの天才は チェーザレにとっても貴重なものだった。
<なによりもまず行動の人であった。>
内面を想像させる手がかりをほとんど残さなかったチェーザレ・ボルジアの、その姿を浮き彫りにするかのように、その行動の軌跡 のみを浮き上がらせた、これは、後に『ローマ人の物語』などイタリアの歴史を紐解く作品で知られることになる塩野七生の、 その後を予感させるような力作なのである。
チェーザレ自身は、生前ただの一度も自分を弁護しようとはしなかった。自分の悪業に対する彼の弁解は、それが策として有効で あった場合にのみ限られる。彼は、自らを語ることの極端に少ない男であった。
2024/11/1
「言語学バーリ、中身を・トゥード Round2」―言語版SASUKEに挑む― 川添愛 東京大学出版会
問 構文の性質が他の3つと異なるものを選べ。
A このチームはキャプテンが有能だ。
B カキ料理は広島が本場だ。
C 山田さんはテニスが趣味だ。
D この株は今が買い時だ。
現役の言語学者、言語学専攻の学生、「言語学芸人」としてブレークしたいお笑い芸人、さらには「街の言語自慢」など、言語学最強 の称号を狙う大勢の猛者たち。東京ドームに集まった、そんな挑戦者たちを一気にふるいにかけるため、第1ステージとして用意 されたのが、「構文四択サバイバル」だった。
というわけで、前著
―Round1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか―
で、隙あらばプロレスの話に持ち込もうとした異種格闘技型言語学、 待望の<Round2>。今回のテーマは「言語版SASUKE」。言語学者の専門能力の凄さを、中身を一切知らない人にもアピール するための「言語学バトル」の構想(妄想?)なのだ。
もちろんこの本は、東大出版会のPR誌「UP」に連載されたものだから、SASUKEの話題は1回のみで、「倒置法の鑑賞」など 興味深い話題満載なのだ。
猪木「やれるのか、お前、本当に」(藤波にビンタ)
藤波「やりますよ。もっと信頼してください、俺のこと」(猪木にビンタを張り返す)
猪木と藤波の伝説のビンタの応酬、「飛龍革命」における会話も、「お前、本当にやれるのか」や「俺のこと、もっと信頼して ください」では迫力がない。倒置法の文は、普通の語順に戻したときとの差が大きく、そのギャップを味わうのが楽しいという。 プロレスと倒置法は相性がいいらしいのだ。(本当か?)
さらに今回は、書き下ろしのコントや小説も加わっており、擬人化された「不」と「未」が特攻服姿で抗争を語るコント「接頭辞 BLUCE」など、爆笑必至である。
不 俺があいつと初めて会ったとき、無表情で無愛想な態度が気に入らなくて、つい喧嘩売っちまったんだ。あいつ、本気になったら 信じられないぐらい無鉄砲で、それまで不敗だった俺も不意を突かれてボコボコにされちまった。
未 でも「無」さんってそんなに強いのに、なんで総長じゃなくて副総長なんすか?総長の「非」さんって、非力そうに見えるけど ・・・(続きは、ご自分で。)
さて、冒頭の「構文四択サバイバル」の回答であるが、これは「カキ料理構文」と呼ばれる、定番の問題なのだそうで、正解は「A」 である。「XはYがZだ」を「XのZはYだ」と言い換えられるかどうか、が見分け方のポイントなのだそうで、言語学者の言葉に 対する瞬時の分析力が問われているという。
ここを無事通過できた方は、回転椅子に座り、1分間で矢継ぎ早に繰り出される問題に答える、第2ステージ「例文タイムショック」 へと移動していただきたい。
問 動詞「来る」が入っているにもかかわらず、物理的な移動を表さないような文の例は?・・・ (答は、自分でお確かめください。)
先頭へ
前ページに戻る