2000年9月読書日記 | 2000年10月21日発表 |
「人体再生」 立花隆 中央公論新社 |
元は1個の細胞が分裂を繰り返し、手は手になり眼は眼になるのは何故か。生命の神秘と言葉でいえば簡単だけれど、もう既に人体再生(人工臓器ではなく、例えばトカゲのしっぽ)については技術的な部分では完成が視野に入っていることは間違いない。 でも脳だけは無理、など昔のSFの話で、ただ脳を再生しても記憶の再生までは無理なので、「その人」の再生にならないところが味噌? |
「ひまわりの祝祭」 藤原伊織 講談社 |
少し旧い本ですが、「テロリストのパラソル」に魅せられて続けて購入したまま放ってあったもの。 題名から触発される絵画的なイメージの美しさがこの人の真骨頂ですが、内容はハードボイルドそのまんま。いささか古い男の頑固さがお好きな方はウィスキー片手にどうぞ。 |
「家族を「する」家」 藤原智美 プレジデント社 |
「家をつくるということ」に続く第二弾。いまどきの子供たちにとって「家族」というものは絶対的な前提としてあるものではなく、 時々気が向いた時に「する」ものなのだということ。「お帰りなさい。あなた、お風呂?お食事?それとも家族にする?」 冗談ではなく、私たちオトナだって、今まで一生懸命家族してたつもりになり、家族しようとすることに何の疑問も持たなかったことに気付かされる本。 |
「ゲーム」 明石散人 徳間書店 |
「毛沢東秘録」が膨大な取材と資料の分析により、歴史的な文脈の中で毛沢東という巨人の行動と思想に迫ったのだとすれば、 これは明石散人という古今東西・森羅万象の通人、解釈の哲人の手による「ケ小平秘録」というべきだろう。なにはともあれ、どこまでが真実か?という思いはいつもの通り。 |
「株・投資信託・外貨預金がわかる基礎の基礎講座」 細野真宏 講談社 |
何故こんな本が売れるのだろう?詰め込み教育受験世代や、マニュアル就職世代が、こういうことに興味を持つ年代になったということなのか? 基本的に人と同じ方向に動いたり、指示どおりやっていたのでは余り楽しくない世界だと私は思うのですが。 |
「ループ」 鈴木光司 角川ホラー文庫 |
「リング」「らせん」と文庫で読んだので文庫になるのを待っていたらやっと出た。(変なこだわりをもっているもので。) ただ今まで待っていたということは、あまり期待していなかったというのも事実で、「リング」のホラーとしての本当の凄さが、映画では「貞子」の存在に集中してしまって興醒め(実際小説では貞子なんて可愛いものですよ)、 「らせん」は辻褄合わせの続編という感じでしたからね。しかし鈴木光司はやはり凄かった。「ループ」単独でもホラーとは別の一つの世界を構築しながら、ちゃんと第三弾としての落とし前をつけている。 三部作この機会に通読しましたが、高尚な「連歌」のような作品群に仕上がっていると思います。 |
「東京アンダーワールド」 Rホワィティング 角川書店 |
一人の人間の行動とそれにまつわるエピソード、証言を克明に追いかけ、検証し、積み上げてみると、 そこに戦後の日本の裏面史が見事に描き出されていた。というわけですが、問題は人物の選び方で「あなたとってもいい人ね(でもそれだけね)」という私のような人生では語るに値しないことを痛感させられる本。 それにしても「やくざみたいな政治家」ではなく「政治家になったやくざ」ということは、要求される素質はどちらも同じなんでしょうか? |
「死のサイズ」 爆笑問題 扶桑社 |
新聞に出た死亡記事の大きさを評価の物差しにして歴史の断面を斬る。という視点がよくて読みましたが、内容はパッとしません。 太田光はかなり注目し評価もしていたのですが、この本では冴えがない。本当に自分で書いたんでしょうか? |