2000年1〜2月読書日記 | 2000年3月1日発表 |
「大江戸死体考」 氏家幹人 平凡社新書 |
村と村との境界で切り殺された死体はどちらの村の管轄か?土壇場の意味は?お試しご用の首切り人が浪人であるにもかかわらず裕福だったのは何故か? 死体あふれる江戸の街のシュールでポップな雰囲気を味わってみませんか? |
「ヒトラーの震え毛沢東の摺り足」 小長谷正明 中公新書 |
毛沢東はパーキンソン病だった。世界を牛耳る独裁者が晩年狂信的な振る舞いに及ぶのは自己も管理できない重病を患っていたから。残された映像からその行動分析により病理を読み取る画期的な試みが新鮮。 |
「嗤う伊右衛門」 京極夏彦 中央公論新社 |
四谷怪談の真実を歴史的考証を踏まえながら構築した力作。凡人の理解を超えた至高の愛に生きる、お岩が可愛い、伊右衛門が渋い。フィクションの持つリアリティが現実を凌駕した。 |
「知の編集工学」 松岡正剛 朝日新聞社 |
いまや幻の名雑誌「遊」(工作舎)の発刊以来、分野の境界を超えた知的探索を「遊学」と称し、広く深く渉猟を続けていた著者が、知の渉猟術を「編集工学」というシステムに集約した。最近、講談社新書でも「知の編集術」というのが出て、こちらの方が一般向き。 |
「知の創造」 ネイチャー 編 徳間書店 |
ネイチャーに発表された一流科学者の論文に対する、一流科学者による一般向け解説書の集約。一般向けとはいえ一流でない一般の科学者向けらしく、内容はかなり高度。でも眼を通すだけで頭が良くなったような気がするし、大体持っているだけでお洒落。 |
「どすこい(仮)」 京極夏彦 集英社 |
昨年度のベストセラーのパロディ。「パラサイトデブ」「土俵(リング)」など、相撲バージョンのどたばたお笑い物のようではあるが、そこは京極堂。原作との連想度、全体のテーマや落ちの統一性など、かなり凝っている。特に「すべてがデブになる」は、密室物としてのレベルでみても秀逸。 |